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価値を生む源泉はみんなが避けたいアレにあった/「ないものはない」海士町の取り組み

 
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心理カウンセラー/調香師 「すべての人が自分らしく生きられる社会」を夢見て、心優しくも励ましが必要な人たちの手助けになればと思っています。 フレグランスデザインでは、あらゆる香りを創ることができます。
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今年の夏に、島根県の隠岐を訪れました。隠岐は本州に近いところから「島前(どうぜん)」「島後(どうご)」の2つに分かれており、さらに「島前」は中ノ島(海士町)、西ノ島(西ノ島町)、知夫里島(知夫村)の3つの島で構成されています。

 

旅行に行く前は、隠岐はひとつの島だと思っていたのですが、実際には4つの島で構成されていることがわかりました。その隠岐の一つ、中ノ島(なかのしま)は、海士町(あまちょう)というひとつの町が行政を受け持っているのですが、全国でもユニークな取り組みをしているというのです。

 

仕事をしていて問題にぶち当たってしまうと、なかなか前へ進めないものです、しかし、海士町の取り組みは都会で仕事をしている人にも問題解決のヒントになるかもしれません。

 

海士町のキャッチフレーズ「ないものはない」

 

ないものはない」というのは、

「なにもないのだから、仕方がない」という「ないものはない」
という意味と、
「ない、なんていうものは、ないんだ。全てがそろっている」
という相反する意味を併せもった言葉のようです。

 

実際に島に行ってみると、「ないものはない」というポスターがいたるところに貼ってあります。

 

それにしても「ないものはない」って、一体どういうことなのでしょうか。

 

海士町は人口2400人くらいの小さな島です。島の周囲は89kmしかありません。

私はほとんどの時間を自転車に乗って過ごしましたが、ゆっくり回っても、北半分を回ることができました。車だったら、島を一周するのに半日もかからないと思います。

 

そのような小さな町で感じたのは、里山のような風景が広がっている地味な島、ということです。

 

どうして、このような地味なところに、IターンやUターンでそんなに人が集まってくるのかがよくわかりませんでした。産業も漁業と観光がメインだと思いますが、観光客としても目線でいうと、これといって目立つような観光資源もないようです。

 

自転車で島を巡っていても、30度を超える暑い夏の日だったこともあるのかもしれませんが、島の人にはほとんど遭遇しませんでした。

そこで、宿泊する民宿までの送迎の車の中で、いろいろ聞いてみました。

 

面白い人が集まってくる仕組み

 

島でよく聞くフレーズに「面白い人」というのがあります。どうやら海士町(中ノ島)には「面白い人」が集まっている、ということらしいのです。

 

でも、どうして一見何もないと思える小さな島に「面白い人」が集まってくるのだろう、と不思議に思いました。どうやら、それは町の行政が移住などのIターンを支援しているとのことですが、それにしても「島においで!」というだけでは、住みたいと思う人が現れるとは考えられません。

移住希望者に補助金などを出しているのかと思えば、そうでないようです。

 

それでは、なぜ集まるのでしょうか。

 

企画に対してお金を出す

 

UターンやIターンが増加している理由は、「何かをしたい!」と考えている人のアイデアにお金を出すという町役場の気概だそうです。

海士町というと、年間予算40億円に対し、借金は100億円以上と、北海道の夕張市のように破綻寸前の危機的状況にある島です。

 

そして、
・超過疎
・超高齢化
・超少子化
…という、日本の将来を先取りしてしまっているような課題山積の島なのです。

 

そのようななかで、町の危機を脱するには、島に産業を興して経済を活性化させるほかなかったようです。貴重なお金をただ移住者に来て欲しいがために補助するのではなく、島に仕事を作りに来てくれる人に対して投資をしたのです。

 

そうすると、何かやりたいけれど資金がない、という人には魅力的な土地になるわけです。

もちろん、どんな企画に対しても資金を出すということではなく厳しい審査を行うのですが、夢見る若者にとってはまさに希望の島であったのです。

 

隠岐島前高校の島留学

 

海士町には、唯一の公立高校「隠岐島前高校」があります。この高校には全国でも珍しい島留学という制度があり、全国から島で勉強したい高校生を受け入れているのだそうです。

 

授業ではアップル社のipadを使い、スケジュール管理には「ほぼ日手帳」を使っているのだそうです。ちなみに、このほぼ日手帳は、島の人口の15人に一人が使っている必須アイテムだとか。

 

今では入学倍率が2倍を超える難関になってしまったようです。

何もない島ではあるけれど、3年間の青春時代を魅力的に過ごせるカリュキュラムはあったわけです。

ここで学んだ生徒が島の発展に尽くすようなプロジェクトに参加したりとさらに活性化のサイクルが回っているようです。

 

「お金をかけるべきは教育だ」ということは、まさにそうですね。

 

面白い人が集まる特殊な場所

 

当時、私が宿泊していた民宿で、10人以上の団体さんが泊まっていました。食事の時にも大いに盛り上がっていたので、どうやら、島おこしメンバーのようでした。自己紹介を聞いていると、全国各地からやってきているようです。
「とにかく何かしたくて!」という人ばかりが集まっていて、とにかく雰囲気が熱っぽかったです。

 

ただ、この日は懇親会というか決起集会というか、そんな感じだったので、いつもこうして民宿に宿泊しているとは思えません。

 

それで、普段はどこに生息しているのかというと、スナックなのだそうです。

 

海士町は人口2400人くらいしかない小さな島ですが、それに比べてスナックの数は多く、夜な夜な会合を重ねて人間関係のネットワークが密になって行くようです。

 

私が「海士町の見所はどこですか?」と聞いたところ、「海士町のいちばんの魅力はスナックだよ」という答えがすぐにかえってきました。それほどスナックは重要な拠点のようです。

隠岐神社とかハートロックなどの観光地を挙げるのかと思ったら、答えは「スナック」です。

 

島に来ると、みんなまずはスナックに連れて行かれるようです。島というと排他的なイメージがあります。しかし、Iターン出身者が多く集まるスナックには、まったくそのようなことがなく、行けば友達、みたいな雰囲気なのだそうです。

 

結局、私は島のスナックを体験する機会はありませんでしたが、人と繋がることが島で楽しく生活して行く上での基盤になるようです。

 

日本でいちばん課題がある島はいちばん成長力のある島でもある

 

海士町は何もなさそうな島でしたが、日本でいちばん課題がある島だとも言っていました。課題はないほうがよい、と感じるものですが、課題があるから面白いのだそうです。

海士町は重要な課題が山積みなのに、課題を肯定的に捉えているのですね。

 

課題を一つ一つクリアして行くには知恵やアイデアが必要です。そして、その知恵やアイデアは何もないところから価値を生み出して行くのです。

 

 

課題だけはいっぱいある。そして、その課題をクリアしていくごとに価値が生まれる。

価値が生まれると成長して豊かになっていく。

こうした変化を目の当たりにできることが、大変ではあるけれど、たまらない魅力なのだそうです。

 

 

いま、会社に限らず、個人であっても、いろいろな課題を抱えていると思います。

しかし、その課題が何かの価値を生む源泉かもしれないのです。

 

そして、その源泉から価値を生み出すツールが知恵とアイデアです。

知恵とアイデアさえあれば、何もないところから価値ある何かを生み出せるのです。

 

まとめ

 

いかがでしたでしょうか。

 

人は単なるお金だけだと動かないということがよくわかったのではないでしょうか。やはり、人の心に火をつけるのは「やりたいこと」に対する動機付けですね。

 

そして、「ないものはない」というキャッチフレーズで、本当に海と里山しかないと思っていた島に、新たに価値を生み出し、隠岐の4つの島のうち、唯一、人口減少に歯止めがかかっている島とのことです。

 

実際に、4つの島のうち、3つを訪れましたが、海士町の観光協会の人がいちばん明るく活気がありました。民宿も港から離れているところに点在しているのですが、観光協会が送迎を代行するなどして、観光のインフラ整備を担っています。

こうしたこともあり、不便な島なんだけれど、実際には不便でない、という不思議な感覚がありました。

 

海士町というと、こうした地域活性化のトップランナーとして語られることが多いそうなのですが、何もないとはいえ、渋い見どころも結構ありますよ。

 

鎌倉時代に島流しにあった後鳥羽上皇にゆかりのある隠岐神社や、自然にハートの形をした穴ががいたハートロックなどは、地味に感慨に浸ることができます。

 

ただし、面白い人が目当てなら、スナックにGo!! です。

 

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