「部下が言うことを聞かない」という上司の悩みを解消する方法
「部下が私の言うことを聞いてくれない」ということは、部下の指導を行っている上司が少なからず直面する課題でもあります。部下が思い通りに動いてくれないと、会社の組織として効果的に業務を進めていくことが難しくなってしまいます。
自分の思い描いた仕事のストーリーが完結しないので、上司としてもじわじわとストレスが溜まってしまうことになります。
いったい、どのようにしたらよいのでしょうか。
なぜ部下は上司の言うことを聞かないのか
部下が上司の言うことを聞かない理由。それはただ一点、「気に入らないから」です。
この「気に入らない」というのは、上司自体を気に入っていない、ということもありますし、上司が言った内容が気に入らないということもあります。
上司自体が気に入らない、ということになると、もっと根本的な人間関係について考えてみないといけませんが、上司が言った内容が気に入らない、ということであれば、比較的簡単に改善することができます。
例えば、こんなことがありました。
会社の全社員に対して、残業時間にどのような仕事をしているのかアンケートを取り、その結果をグラフ化する仕事がありました。ある上司が、部下に対して、この仕事を一週間以内にやるように、言ったのですが、期日になっても資料が上がってきません。
上司:「前に依頼した資料はどうなっている?」
部下:「ちょっとデータ量が多くていろいろ難航しています。もうちょっとかかりそうです」
上司:「しょうがないなぁ。じゃあ、次の打ち合わせの時までには頼むよ!」
・・・と、次の打ち合わせの日まで待っていましたが、結局、その資料は出来上がってきませんでした。
資料を使うはずだった打ち合わせで、
上司:「うちの部下が言うこと聞かなくて、資料が全然できてこないんだよ。困ったもんだ…」
…と周囲にぼやきます。
それにしても、上司から依頼された仕事なのに、どうして部下は期限までやることができなかったのでしょうか。
当事者の部下によると、それよりも緊急の仕事が次々入ってきてしまうため、なかなか上司から依頼された仕事に手をつけることができなかったようです。
上司から言われた仕事よりも、今かかってきた電話の問い合わせのほうが優先と捉えていたわけです。
ただ、そうは言っても、上司から依頼された仕事については、多少残業して頑張れば、できないことはありません。
その部下の本心からすれば、上司から依頼された仕事に対しては、やる気が起きなかったのです。仕事なんだから、やる気が起きなければやらなくていいわけではありません。でも、結果として、ずるずると後回しになってしまい、期日になっても成果物ができなかったのです。
どうして、その部下はやる気が起きなかったかと言うと、その仕事に意味を見出せなかったからです。
資料を作るには、アンケート結果をデータ化して数値を集計し、きれいにグラフ化していかなくてはなりません。
データ集計をエクセルで行うにしても、かなりの手間なのです。
そして、その手間をかけて資料を完成させたとしても、その先にあるものがイメージできなかったわけです。
「結局、これって、打ち合わせで発表して、上司が自己満足するためだけの資料なんじゃないの!?」
…と感じてしまい、なかなかヤル気が起きなかったようなのです。
要するに、部下からしてみれば、上司から依頼された仕事が気に入らなかったわけです。
だから、部下はその仕事を後回しにしてしまい、上司としては「部下が言うこと聞かない」と嘆く原因になってしまったのです。
上司も不満が募りますし、部下にもフラストレーションが溜まります。
こういったことが、これからも続いていくと、上司と部下の溝は、どんどん広がってしまい、ますます上司は「部下が言うことを聞いてくれない」と嘆くような悪循環に陥ってしまいます。
それでは、いったい、どうすればよいのでしょうか。
部下の話を「聴こう」
上司の理想とすれば、自分が言うことに対して、部下が素早く反応してくれて、自分のイメージ通りのやり方で、仕事が上がってくる、ということを夢見るでしょう。
これが自分の言うことを聞いていくれる状態だからです。
しかし、現実には、自分が言うことが、部下にきちんと伝わって、すべてがうまく動いてくれるわけではありません。相手は機械ではなく人間だからです。
一方で、部下がよく言うことを聞いてくれる上司もいることでしょう。
いったい、何が違うのでしょうか。
さきほど、部下が上司の言うことを聞かないのは、「上司の言うことが気に入らない」からだ、ということを書きました。
要するに、部下が納得いっていないわけです。
先ほどの資料作成の例でいうと、残業時間を縮小するための基礎資料という位置付けのものなので、決して意味のない仕事ではないはずです。それでも、部下はあまり乗り気ではなかったのです。
この点に関しては、上司のほうも、部下に仕事を頼むときに説明不足でした。
「残業時間のアンケートを集計して資料を作ってくれ」と依頼しただけでした。
上司としては、仕事なのだから、部下がやるのは当たり前だろう、という気持ちがあります。
しかし、仕事だからといって、みんな思い通りになるとは限らないのです。
一週間後に上司が「あの仕事、どうなった?」と聞いたときに、部下は「データ量が多くて難航しています」と答えていました。
本当は遅くとも、この時点が、もっと部下とコミュニケーションをとるポイントだったのです。
「データ量が多くて難航しています」と部下が答えた真の理由はなんだったのか。
上司からすれば、「データ量が多かろうが少なかろうが、期日までに仕事をするのは当たり前だろう」と思ってしまい、そこで思考が停止してしまうかもしれません。
でも、部下は「どうせ、上司が発表するための自己満足の資料だろ」と内心思っていたわけです。
もちろん、部下のほうは、そうした内心を上司に明かすわけがありませんから、「データ量が多くて大変です」というにとどめていたわけです。
上司は、この時点で、期待通りに行っていないわけですから、部下の話をよく聞かなければなりません。
上司:「データ量が多くてなかなか資料が進まないんだね。確かに全社員分だから大変だね」
部下:「正直、しんどいです」
上司:「そうか、しんどいのか」
部下:「はい・・・」
上司:「どうして、しんどいんだろう」
部下:「私の仕事は、昼間はほとんど電話対応で潰れてしまうのです。電話の向こうでは、すぐに回答がほしい、という案件ばかりなので、待ってくれないのです」
上司:「そうか、昼間の仕事が大変なんだね」
部下:「そうなんです。仕事に追われてしまっている感じです。だから、アンケートデータを集計できるようなまとまった時間がとれないのです。夜に残業しないと、集計している時間がないのです」
上司:「そうか、昼間は電話対応で大変だ、ということなのだね。でも、この前、依頼した仕事も実は重要な仕事なんだ」
部下:「仕事だから、やらなくてはならないのはわかるんですが・・・」
上司:「今、会社では残業時間がすごく長い人と、ほとんど残業がない人の差が激しくて、毎日夜遅くまで仕事をしていた人が体調を崩してしまった社員もいるんだ。この資料で実態を明らかにして、必要な対策を経営陣も含めて検討したいんだよ」
部下:「そうだったんですか・・・」
上司:「そうなんだ。だから、エクセルが得意な君にこの仕事を頼んだんだ。でも、電話対応で忙しいのは見ていてわかってはいたけれど、そこまで大変だとは思わなかった。今度、もう少しメンバー間で仕事量を調整できるか考えてみるよ」
・・・という具合に部下の話を聞いてあげれば、だんだんと部下も上司に対する理解が深まっていくのです。
そして、部下にとっては「上司が私の話を聞いてくれた」となるでしょう。
「部下が言うことを聞いてくれない」のではなく、「上司が部下の話を聞いてない」ことが多いのです。
自分の言うことを聞いてもらうには、まず、自分が部下の言うことを聞いてあげることが必要なのです。
上司だって昔はみんな部下だった
もし、あなたが管理職で、部下を持つ立場だとしたら、昔の自分を思い出してみるといいでしょう。
昔はきっと飲み屋でも「まったく、うちの上司は話を聞いてくれないんだよぁ」と愚痴っていたのではないでしょうか。
でも、時間が経つにつれて、あなたも昇進していき、だんだんと部下だった時代の気持ちを忘れていってしまいます。
いま、管理職でいる人たちも、昔はみんなぺぇぺぇからスタートしたわけです。みんなそのような下っ端を経験したにもかかわらず、管理職という立場になってしまうと、自分が部下だった時の気持ちが薄れていってしまうのでしょう。
もし、部下との関係で悩んでしまったら、ぜひ、自分の過去を思い出してください。
まとめ
部下が自分の言うことを聞かないのは、上司が言うことが気に入らないからです。
でも、なぜ気に入らないかというと、やはり意思疎通ができていない、というか、お互いに理解不足だからです。
だから、結局は、コミュニケーションが大切になってきます。
どうしても、人は自分の話を聞いて欲しくて喋りすぎ、語りすぎ、になってしまいます。
でも、本当は、口が一つで耳が二つあるように、聴くほうを話すよりも2倍多くするように心がけないと、なかなか理解度が深まらないものです。
話を聴いてみると、いろいろなことがわかってきます。そのわかった情報から、さらに自分が伝える内容も変化していくはずです。
話す前にまず聴こう、と意識しましょう。やがて「自分の言うことを聞いてくれる」部下が増えてくることになります。