魚をくれていた隣の漁師が引っ越したら隣人はどうなったか/上司として仕事をしない勇気

 

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心理カウンセラー/調香師 「すべての人が自分らしく生きられる社会」を夢見て、心優しくも励ましが必要な人たちの手助けになればと思っています。 フレグランスデザインでは、あらゆる香りを創ることができます。
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会社員のとき、管理職として失敗したなぁ、と感じることがひとつあります。それは、部下に仕事を渡す時に、親切心のあまり、わかりやすく懇切丁寧な解説付きで業務を依頼していたことです。

 

通常は「売り上げを分析して改善策を明日までにまとめてほしい」と、一言で済ませても良いところを、資料のフォーマットやデータの保存先、数字の見方や分析方法まで、あらゆることを手取り足取り伝えてから仕事をやってもらっていたことです。

 

もちろん、こうした姿勢は部下には親切で優しいかもしれませんが、それ以上に重大なミスを犯していたことに気づきました。

 

仕事は成長の機会でもある

 

「売り上げを分析して改善策を明日までにまとめてほしい」という仕事の投げ方はよくあるパターンだと思います。しかし、部下の熟練度によって、ざっくりとした依頼の仕方では、まったく仕事が進まない社員もいます。

 

私は過去に「とりあえず、なんとかやっておいて!」と言って早々に帰宅してしまう上司に対して「そんないい加減な指示じゃ、わかんないだろっ!」と不満を感じていたことがありました。

そうしたことから、自分の部下に対しては、なるべくわかりやすく親切に業務指示をするように心がけるようになりました。

 

しかし、親切に仕事を渡す、というのは一見、良いことのように思います。しかし、中には、なんでもかんでも手取り足取り準備をした上で仕事を回す、というスタイルに不満を持つ部下もいたわけです。

 

特に、ある程度、業務経験ある社員にとっては、懇切丁寧にパッケージされた仕事を渡されるのは、うざったいのです。それに、パッケージ化されてしまうと、部下がいろいろ創意工夫をして仕事を仕上げていくという裁量を狭めてしまうことにもなります。

前段階で、上司が仕事のやり方を考えてしまうことで、部下が考える必要がなくなり、仕事が単なる作業に近くなってしまうのです。

 

こうしたことが、「部下の成長の機会を奪っているかもしれない」と感じたのです。自分が部下のために仕事をしてしまうことが、かえって部下のためにならない。そのことに気がつくまでは、だいぶ時間がかかってしまいました。

 

上司が親切に仕事を準備してしまうとどうなるか

 

上司が仕事をやりすぎてしまうと、部下の側としては確かに楽です。それに、仕事が出来上がった時にも、上司が思い描いたフォーマットで資料が出来上がっているので、安心して承認することができるでしょう。

しかし、上司が親切に仕事を準備してしまうと大きな弊害もあるのです。

 

過保護が標準になってしまう

 

上司のほうが忙しくて、いつもと比べて仕事の指示が荒っぽいと「なんだか今回は雑な業務指示だな」と上司に対して不満を持ってしまうのです。たとえ、他の部署の上司よりも格段に親切な仕事の依頼をしていたとしても、です。

 

過保護なくらいの親切な仕事のやり方が基準になってしまい、その基準を下回るような指示の仕方だと、もうダメなわけです。

これでは、部下の側としては「今回は不親切だな」という感情が芽生えてしまいますし、上司の側も「普段よりも荒っぽい業務指示になってしまった」と気になってしまうでしょう。これでは、お互いによい状況であるとは言えません。

 

部下が依存体質になってしまう

 

上司が仕事の前段階を用意してしまうと、部下はだんだん物事を考えなくなっていきますし、上司に依存するようになってしまいます。

 

「これはどうやればいいんですか?」「どこの資料を見たらいいんですか?」などと、考えたり調べたりすることを上司に委ねてしまうのです。考えるのは上司、作業をするのが部下、という住み分けをしてしまい、考えない部下になってしまうのです。

 

上司として仕事をしない勇気

 

優しい上司であればあるほど、部下が困らないように、いろいろと準備をしてしまったり、世話を焼いたりするものです。また上司自身も「仕事をやった感」みたいなものを感じてしまいます。

 

しかし、本当は、「あえて仕事をしない」という勇気も必要なのです。特に、考える領域にはなるべく立ち入らない、ということも大事だと思います。

 

実際には、仕事をしない上司のほうが部下が育ったりします。

組織として、部下がそのぶんを埋め合わせするのです。そして、部下は部下なりに、関係者に聞いたり、資料を調べたり、データ分析のやり方を学んだりして、曲がりなりにも成果物を仕上げようと工夫していくのです。

 

出来上がった成果物は、上司としてはあまり出来の良いものではないかもしれませんし、今まで成功してきた型に、はまっていないかもしれません。

しかし、一方で、上司の方も思いもよらなかった発想や考え方が出てくる可能性もあるのです。

 

そして、何よりも、なんとか部下がひとりでいろいろ悪戦苦闘しながら仕上げた仕事を通じて、成長することができたのです。具体的にはデータ分析の方法かもしれませんし、見栄えの良い資料を作るセンスが磨かれたのかもしれません。

これは、上司が仕事をしなかったからこそ、部下が獲得した成果でもあります。

 

上司が部下に対して親切にしてあげたいと言う気持ちに、あえてブレーキをかけた結果、部下がそのぶん成長したのです。

これは、今後の仕事の品質が向上するきっかけにもなります。

 

魚をもらった漁師の話

 

あるところに漁師がいました。

その漁師の隣にはいつも魚をくれる先輩の漁師がいたので、特に漁に出なくても食べていける名ばかり漁師でした。

 

 

しかし、あるとき、隣の先輩漁師が引っ越してしまいます。

 

そして、次にやってきた老齢の漁師は魚をくれませんでした。

 

名ばかり漁師の生活は一気に困窮していきます。なぜなら、魚を取ってくる釣竿の使い方も経験もなかったからです。

 

前の先輩漁師は親切心で魚をくれていました。

 

しかし、本当の親切は、魚をくれてやることではなく、釣竿をくれてやることだったのです。

 

そうすれば、この釣竿を使って、どのようにしたら、魚を釣ることができるのか、必死に考えるはずです。

また、魚を釣る時間は朝がいいのか昼がいいのか、どの辺のポイントに魚がいるのかなど、自分で調べることもするでしょう。そうして、創意工夫し実践することによって、自分自身で魚を釣ることができるようになるのです。それは隣の家に関係なく、自分で生活できる力を得たことを意味します。

 

 

そう考えると、親切心でやっていたことが、本当に親切だったのか、疑問も出てきます。

 

 

結局のところ、自ら体得していかないと、生きる力を獲得し、その力をアップしていくことができないと言うことです。

 

 

「自分でやれ!」というのは、やれと言われた本人は、もちろん大変ですし心細い思いもするだろうと思います。しかし、「やれ!」と言ったほうも、優しい人であればあるほど、苦しんでいる隣人を見守るのはつらい気持ちでいるかもしれません。

 

しかし、最終的には「本人のためになる」と信じて、あえて手を貸さないことも愛情として必要なのです。

 

まとめ

 

いかがでしたでしょうか。

 

優しい上司ほど、つい部下に手を貸してあげたくなってしまいますが、場合によっては、グッとこらえて手を貸さないことも必要なのです。部下が自分で生きていく力をつけるために、そして、上司も、自分で生きていける部下を育てるために。

 

親切に仕事がやりやすいように手取り足取り整えてあげるのは、まったくの新人の時は必要でしょう。しかし、ある程度の時間が経てば、逆に、なるべく部下に任せて、上司は仕事をしない方が良いのです。仕事をしないぶんで浮いた余力は、部下が失敗した時のフォローに当てれば良いのです。

 

 

本当に優しい上司は、部下が自力で魚を釣ることができるように、愛情を持って見守ることのできる人、かもしれません。

 

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