ビジネス書を捨て絵本を読もう!人生に迷った時ほど読むべき珠玉の3冊
大人になると、絵本を読む機会はほとんどなくなると思います。代わりに今流行りのビジネス書が自宅の本棚を占領しているのではないでしょうか。
もちろん、ビジネス書には仕事をするにあたって必要な情報がコンパクトにまとめられていて、とても便利な情報源です。
しかし、ビジネスの世界にいながらビジネス書を読んでいるということは、同じ世界を2度見ているようなもの。みんなと同じ景色をみているわけです。
時代が急速に変化している現代は、よりクリエイティブな発想が求められたり、感性の比率が高まってきたりしています。
アップルやティファールの製品がデザインを重視していたり、グーグルのトップページも、検索窓とロゴだけという余計な情報を一切載せていないのは感性に訴えかけているからです。
本屋さんに行って、絵本コーナーに立ち寄る会社員はほとんどいないと思いますが、絵本にこそ、人生の課題に役立つ大切なメッセージが込められているのです。
今回は、悩める社会人に役立つとっておきの絵本を紹介いたします。
りんごかもしれない(ヨシタケシンスケ)
この「りんごかもしれない」は、絵本作家ヨシタケシンスケさんの発想えほんと呼ばれるシリーズです。
テーブルの上に置いてあった一つのりんごに対して、「これは りんごじゃないのかもしれない」と絵本の坊やがつぶやいたところから物語が始まっていきます。
通常、大人がリンゴを見たら「これはリンゴだ」ということで終わってしまいます。
ところが、このひとつのリンゴに対する妄想が壮大なスケールに達していき、このりんごのことだけで、物語が進んで行くのです。
固定観念が打ち破られる!
この絵本をめくっていくとわかるのですが、「りんご=りんご」という固定観念をまったく打ち破ってくれます。
大人が読むと、この絵本はただのバカらしい妄想だと感じるかもしれません。
しかし、子供たちは、リンゴから始まるこの絵本の世界に、奥深い世界を見ることになると思います。
この絵本を読んだ子供は、リンゴだけでなく、みかんや椅子といったものに対しても、「これは、本当はみかんじゃないのかもしれない」とか「これは椅子じゃないのかもしれない」と疑問を抱くようになるかもしれません。
子供にとっては、ひとつのモノを深く見つめるだけで、その奥にある壮大な世界を感じ取ることができるはずです。
大人にとってはバカらしい話でも、子供にとっては、身近なモノで遊べるファンタジーなのです。
では、大人にとっては、単なるバカバカしい話なのでしょうか。
「りんごかもしれない」という絵本には、リンゴを様々角度から徹底的にリンゴを描ききっています。こうしたことは、ビジネス書でも度々言われていることで、ものの見方はいろいろある、ということでしょう。
ビジネス書では「物事はさまざま角度から多角的に見ていかなくてはならない」と記述されます。
しかし、ヨシタケシンスケさんの絵本では、同じことを
「りんごかもしれない」
と、たった一言で言い表してしまうのです。
物事を色々な角度から見て行くことが有効であることは、たいていの方が納得することでしょう。
しかし、実際に仕事の場面や日常生活の中で、「さまざな角度から物事を見ている」とは言い難い状況ではないでしょうか。
りんご、という関連では、iPhoneを作ったアップル社があります。
iPhoneの生みの親であるスティーブ・ジョブズは「コンピューター=コンピューター」だとは思っていなかったのではないでしょうか。
「コンピューターは、電話かもしれない」
と思ったから電話機能付きのコンピューターであるiPhoneが生まれたわけです。
スティーブ・ジョブズが最初に作ったのはMacというパソコンですが、そこにとどまらず「パソコンは電話かもしれない」という感覚から世界を変えた発想が生まれたのです。
そして、アップル社そのものも、「アップル=パソコンメーカー」ということに固執していたら、音楽のダウンロード配信やアプリの販売、Apple Payの開発など、世界に影響を与えるような商品やサービスは生まれてこなかったのだと思います。
「アップル=パソコンメーカー、、、じゃないかもしれない」
ということから、さまざまなイノベーションが生まれたのです。
絵本は文字情報よりも膨大な情報量がある
ビジネス書と違って、絵本は文字が少なく絵やイラストがほとんどを占めています。文字よりも絵などの画像情報のほうが10倍以上の圧倒的な情報量があることで知られています。
この「りんごかもしれない」は30ページほどの絵本なので、すぐに読めてしまう絵本ですが、その情報量は300ページ以上のビジネス書に匹敵するわけです。
すぐに読めて情報量はビジネス書一冊分。
こんなに効率的な読書はありません。しかも、絵の情報なので、ずっと頭の中にはイメージで残っています。
「ビジネス書を捨て、絵本を読もう!」という理由はここにもあります。
アライバル(ショーン・タン)
絵本というと絵が主体で文字量が少ない、という特徴がありますが、その絵本の究極の形がここにあります。
ショーン・タンの「アライバル」です。
この本には文字がありません。ひたすらモノトーンの絵だけで物語が進んで行きます。
しかし、このアライバル、世界各国29もの賞を受賞したすごい絵本なのです。
ストーリーは、絵だけなので、読む人によっていろいろな物語を思い浮かべると思います。
しかし、細かいコマ割りで人の表情や仕草なども緻密に描かれています。
主人公は、妻と子供を残し、住み慣れた街を離れます。
そして、不穏な空気に包まれた街を出て新しい暮らしを手に入れるために旅立つのです。
そこに待ち受けるのは、新しい何かを始める時に出会う不安や恐れ、そして戸惑いです。
しかし、新しいことへのほのかな期待感も併せ持っています。そのほのかな希望を元に、全く訳がわからない世界で生きてゆく術を探しながら一歩一歩進んで行くのです。また妻と子供と一緒に新しい世界で幸せな日々を送るために・・・。
この物語は、現代でも、自分が何か新しいことを始める時に出会う、様々な出来事や心の動きとシンクロします。
物語で描かれる街は、中世のような未来のような不思議な空間が描かれます。そのような、言葉も習慣も違い、どこに何があるのかもまったくわからないような場所で、決して勇敢でも頭脳明晰でもない主人公が、格好悪くてもなんとか生きていく様子が描かれているのです。
これは、これから何かを始めようとする人、そして、今、いろいろな転機を迎えている人にとっては、深く考えさせられるようなストーリーが展開されているでしょう。
この物語の最後に描かれているものは、まったくわけのわからない世界にやってきた人に対するシンプルな優しさです。そして、その優しさが希望の連鎖を生むのです。
そして、その優しさは大それたことではなくて良いということを教えてくれます。
このアライバルで描かれる最後の希望は、たった1秒でも、子供でもできる動作です。しかし、そんなたったひとつの動作だけでも、人は明日への希望を持つことができるのです。
星の王子さま(作:ジョアン・スファール 訳:池澤夏樹 原作:サン=テグジュペリ)
最後にご紹介するのは、サン=テグジュペリの「星の王子さま」です。
この物語は有名すぎるので内容については、知っている方は多いと思います。
ここで紹介するのは、絵本というよりもコミックに近いかもしれません。
「ものは心で見る。肝心なことは目に見えない」
…という、きつねが王子さまに教えた秘密の言葉はあまりにも有名です。
星の王子さまについては、サン=テグジュペリも絵を書いているので、そのふわっとしたファンタジックな雰囲気が一応、星の王子さまのイメージとして共有されています。
しかし、このフランスのジョアン・スファールという作家が描いた星の王子さまは、もっと無邪気で子供らしいイメージです。
この本は、上述の2冊に比べて200ページ近いページ数があるので読み応えがあります。ただ、それでも、イラストが主体なので、ストレスなく読むことができます。
星の王子さまは、誰もが知っているストーリーかもしれません。
でも、「本当に大切なことは何なのか」ということを思い起こさせるには最適な物語です。
そして、この「星の王子さま」は、多くの人が知っているサン=テグジュペリの絵のイメージではなく、フランス作家が描いた独特な雰囲気を持った王子さまです。だからこそ、ファンタジックなイメージから離れて、リアルな星の王子さまの世界を体感することができ、ピュアな気持ちで人間の本質に向き合うことができるのです。
そうした星の王子さまが持つファンタジーと現実社会に生きる私たちのリアルをつないでいくような世界を感じ取ることができると思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
オススメする絵本は、
- りんごかもしれない(絵:ヨシタケシンスケ)
- アライバル(絵:ショーン・タン)
- 星の王子さま(絵:ジョアン・スファール 訳:池澤夏樹 原作:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ)
…でした。
絵本は子どもが読むものだ、と思っているとするならば、すごくもったいないことです。
絵本の世界はファンタジックなものが多く、一目見ただけでは実用的には思えないかもしれません。しかし、物語はシンプルに本質をついたものが多く、しかも短時間で多くの情報量を得られる媒体です。
人生に迷ったとき、何か問題が起きてしまって困っている時、ぜひ、絵本を手にとって読んでみてください。そこにあなたが求めるヒントが載っているはずです。