自分を生きる、活かしてくれる社会のために

会社員からフリーランスへの第一歩はコミュニティを探すこと/野里のどかさん

 
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心理カウンセラー/調香師 「すべての人が自分らしく生きられる社会」を夢見て、心優しくも励ましが必要な人たちの手助けになればと思っています。 フレグランスデザインでは、あらゆる香りを創ることができます。
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今回は、会社員を卒業してフリーランスとして活躍している野里のどかさんの人生をたどりながら、手持ちのカードを、どうやって切っていったのか、を探っていきます。

「自由に仕事をしたいけれど、どうしたらよいかわからない」「やりたいことが見つからない」「退職した後の生活が不安」と感じているアナタ。

人生いろいろあっても、軽やかに生きていくヒントがここにあります。

 

離婚家庭で育った私は「助けて!」と言えなかった

 

私は18歳になるまで、鹿児島県鹿児島市で過ごしていました。

そんな私に、いきなり試練がやってきました。両親の離婚です。まだ小学校1年生の時でした。

なぜ両親が離婚したのかは、実は、私もいまだに知らないのです。離婚裁判の結果、母親には会うことはできることになっていたので、今でも連絡を取り合うなかではあります。それでも結局は離婚の理由は不明なままなのです。

ただ、この両親が離婚したという出来事は、その後の私の人生を大きく振り回すことになります。

 【配られたカード】

このカードから始まった。

大人は誰も守ってくれないと感じていた

 

父親は再婚し、新しい母親(育ての親)がやってきました。

しかし、平和な家庭ではなく、両親は2日に1回はヒステリーを起こしていました。夜中に両親から叩き起こされて、数時間、怒鳴られたりしていました。

怖くて泣いても、「泣けば優しくされると思っているんでしょ!」と言われるので、泣くこともできなかったのです。

いつも、部屋に戻って布団にくるまって泣いているような子どもでした。誰にも「助けて」と言えない環境で18歳まで育ってしまったので、それが今の悩みでもあります。

 

私はみんなの前でも自己主張はできるのですが、自分に内面にある「苦しい」とか「しんどい」という言葉を言えなくなってしまいました。そのようなことを言うと、怒られてしまうという恐怖があるからです。

この性格とは一生付き合っていかなくてはならないな、と感じています。

この悩みは、周囲に信頼できる仲間を増やしていくことで、うまくやりくりしていくしかないのかな、と今では思っています。

 

【配られたカード】

自己主張は強いのに、自分の中にある苦しさは外へは出せなかった。

 

「苦しい」「しんどい」と言えない人の助けになりたい

 

こうした経験から、「私と同じような思いをした人の助けになりたい」ということが私の一つの軸になっています。

 

私のエネルギーは「過去の自分を助けてあげたい」で一貫しています。

それは「どうしてあの頃に助けてあげられなかったのだろう」という償いの気持ちから来ています。今ではいろいろな活動をしているものの、それが私のモチベーションになっています。

 

18歳になるまで、ずっと自分は漫画家になるものだと思っていた

 

実は、小学校1年生から18歳までずっと漫画家になろうと思っていたのです。将来、それを叶えるためにはどうしたらいいかと、ずっと考えていました。

 

【配られたカード】

物語を作ったり絵を描いたりすることが好きだった。絶対、漫画家になろうと思っていた。

「お小遣いが増える」それが高校選びの理由だった

自転車で通える距離にある近所の高校を選びました。母親が「交通費がかからない分、お小遣いを増額する」ようなことを言ってくれたので、つい、それに飛びついて決めたのです。

 

部活はソフトボール同好会に入って、マネージャーをしていました。

はじめは選手として入部したのですが、1週間後に、ボールが顔面に当たって怪我をしてしまい、選手を続けるのは怖くなってしまったのです。
運動神経にも自信がなかった私は「これは無理だ」と感じて、選手からマネージャーにシフトしました。

 

高校3年間はソフトボールに青春を捧げたような生活でした。マネージャーとして人をサポートすることや、みんなが気づかないことを整えたりすることに、やりがいを感じることができたのも自分にとっての収穫でした。

ソフトボールと関係ない人からも「マネージャー=野里のどか」というイメージが定着したほどのキャラクターになっていたようです。いつもニコニコして場を整えてくれるような人、そんなイメージだったようです。

昔から人のために何かするようなボランティア精神は旺盛だったと思います。

 

【配られたカード】

マネージャーの役回り。人のために何かできることが楽しかった。

他校の女子高生に出会って「世界は広いんだ」と知った

 

私が衝撃を受けたのは、高校時代にオーストラリアへの派遣団に参加して、他の女子高生と一緒に2週間過ごしたことです。

派遣団に参加した高校生は私以外は鹿児島市内で上位3校の人たちでした。鹿児島という土地柄、女子はなるべく家にいるべきという風潮がありました。私の高校も進学校ではあったのですが、本州に進学した女子生徒はクラスで2人しかいません。

ほとんどの学生は鹿児島県内の大学に進学するか地元の短大に行くか、就職するかの選択しかない状況でした。

しかし、派遣団で出会った人たちは、鹿児島県外も視野に入れて進学先を吟味していたり、美人で女優やモデルを目指している人、海外で働こうと考えている人など、自分が考えもしなかった景色を見ていたことが衝撃でした。

 

【配られたカード】

英語が好きだったことが海外派遣団につながった。

単純に所属する世界が違うだけで、見ている景色が違う

別に学歴がすべてではないと思いますが、単純に所属する環境によって、見える世界があまりにも違うことを痛感しました。この選択によって、社会人へのステップアップで大きな差が出ることを誰も教えてくれません。

私はそんなことも知らないまま、例えば、好きな人が行くから同じ高校へ行く、親も近所の高校がいいと言っている、お小遣いもアップしそうだ、ということだけで高校を選んでしまいました。

「このようなことをやりたいから、この高校を選ぶ」ということをしてこなかったのです。

 

幸いにも、私は他校の人たちの触れることで、鹿児島県から飛び出して進学する決断をすることができました。

 

人間って、いろいろな人がいますし、さまざまな世界があることもを知りました。

私の家庭の悩みは「たまたま私の家に生まれただけ。今は辛いかもしれないけれど、他の場所があるからきっと大丈夫」と希望を持てるようになりました。

 

【配られたカード】

世界は広かった。私にも他の場所があるはず、と希望が持てた。

漫画家になるために大学に進学

 

私にとっては、漫画家になることが一番でした。だから、漫画家になるためにどうしたら良いかという視点で、3年生になるまで美術大学を志望していました。

しかし、親は反対しなかったものの、美大は学費がべらぼうに高額だったので、さすがに進学を諦めてしまいました。

 

「さて、どうしようか・・・」と考えていた時に、ユニークな学科がある大学を見つけました。統計学や人類学などのお堅い学問から、妖怪学や恋愛学といったユニークな学問も取り扱っているところだったのです。

私は、その大学を志望することに決めました。そして、入学後は専攻の哲学に熱を上げることになるのです。

 

【配られたカード】

哲学の議論を通じて、苦しい内面も初めて少しアウトプットできた。大学の授業は、そういう場だった。

漫画家になるはずが・・・

物心ついた頃から漫画家になることが夢だった私ですが、その情熱は大学1年生の時に失われてしまいました。

東京にひとりで行って大手出版社に漫画の持ち込みをしたのですが、それが採用されることはありませんでした。

しかし、不思議と悔しいなどの感情が湧かなかったのです。それ以降は、漫画を描きたいという衝動が取り除かれたような気持ちになりました。

 

漫画家になりたいという将来像がなくなった当時は、その空白を埋めるものはなく、「私はいったい何になりたいのか」がわからないまま大学卒業を迎えることになりました。

 

いったい何がしたいんだろう

 

大学3年生から周囲の学生は就活に精を出していたのですが、その頃になっても、将来どのような仕事に就くのかイメージが湧いていませんでした。

 

この時期には、みんな自己分析をすると思いますが、ご多聞に漏れず、私も「一体何がしたいんだろう」と自己分析の真似事をしていました。

すると、漫画や物語を作ること、それから英語が好きだだということが浮かびました。ただ、どちらも中途半端に終わっていることが気になっていました。

 

そんなわけで、結局はフィリピンのセブ島に留学する道を選んだのです。

 

【配れたカード】

留学という道を選ぶことのできる自分になっていた。

お金を稼がないと!

 

「まずはお金を貯めないと!」と、ひたすらバイトしていました。

しかし、せっかくなら海外にいてもお金を稼ぐことができたら精神的にも安心だ、とも考え始めていました。周囲が社会人として働いている間に、何も稼ぎがないのはどうかということもありました。

 

「海外で私が稼げる方法は何かな?」と考えた時に、私は文章を書くのが好きだと言うことに気がつきました。

小学生の時から文章を書くのが好きで、作文コンクールなどでも賞を取ったりしていたのです。それだけは圧倒的に自信があったので、Webライターになろうと考えました。

そこで、インターネットで「Webライター 募集」などと検索して、気になるサイトに応募してWebライターになったのです。

 

そうして、留学期間中から現地の様子を Web上で発信するようになりました。

 

【配られたカード】

文章を書くのが好きだった。海外でもできることとして、ライターという仕事が私のアンテナにひっかかった。

新卒フリーランスから初めて会社に就職

 

本当は、セブ島に2ヶ月勉強してからアメリカに1年くらい留学する計画でいたのです。ところが、日本に一時帰国したことが、その後の運命を変えていきました。

 

なりゆきで新卒フリーランスへ

 

東京のメディア会社で専属ライターになるチャンスが巡ってきたのです。

ただ、東京のオフィスで先輩ライターのアドバイスを受けながら、記事を書いていくことが条件でした。

「Webライターになれたら、海外でも働ける!」「一旦、日本に帰国をしてWebライターになってから、また留学先に戻ろう!」と考えていました。

その頃はまだフリーランスという言葉も知らず、Webライターがどのように稼ぐのも知らない時期でした。当時の私にとっては、まだ世間知らずだったこともあり、「このチャンスを逃したら、Webライターになれないかも!」と考えてしまいました。

まとめると、「海外で過ごしたい」→「そのための稼ぐ手段としてWebライター」→「そのまま自然とフリーランス」という経緯になります。

でも、結果としては、今の私につながっているので良かったと思います。

 

【配られたカード】

流れでフリーランスになった。

新卒フリーランスとしてやっていたこと

 

専属ライターの事態には、旅行系のまとめ記事を書いたり、キュレーターのようなことをしていました。ただ、それだけでは食べていけないので、バイトもして生活費を稼いでいました。

そのような状態だったので、「私はフリーターになりたくてライターになったわけではないのに・・・」とも感じてきました。

本当に何かしないと、このままではまずいぞ」という焦りがありました。

 

千葉県富津市へ講座を受けに行く

 

「ライターで稼げるようになるにはどうしたらいいだろう」と考えていたときに、前職である田舎フリーランス養成講座を受講して、そのおかげでフリーランスとして自立することができるようになりました。

お金を稼ぐために必要なスキルと稼げる手段を教えてくれるので、本当にお金を稼ぎたいと思うのであれば実際に収入を得られるプログラムだったのです。

 

私の場合、講座中は1円も稼いではいなかったのですが、受講していた千葉県富津市が気に入りすぎて移住までしてしまったのです。

そのようなわけで、私はそのまま拠点となるコワーキングスペースの店長をやらせてもらえることになりました。

 

【配られたカード】

講座に出たら、移住。そして店長へ。

まずはどこかのコミュニティの一員になること

フリーランスで仕事をしている人の中では、クラウドソーシングで仕事を取り過ぎてしまう人も出てきます。

仕事を獲得することが上手い人は、50本1セットの仕事を全部取って、それを自分の周囲のフリーランスに割り振って、その人は手数料だけを取るような仕事をしている人もいるのです。

そうした仕事できる人のそばにいると、割と自然に仕事が転がり込んでくることがよくありました。そうしてお互いに助け合っているようなことが多かったと思います。

 

駆け出しのフリーランスの場合、最初はコミュニティの一員になることが大切だと感じています。

私はフリーランスになったときに、周囲に相談できる人が誰もいなかったことが辛かったので、コミュニティに所属できたことは本当に良かったと思っています。

 

【配られたカード】

あなたに合うコミュニティはきっとある

 

現在は、キャリアアドバイザーとして、フリーランスになりたい人や、これからの働き方に悩んでいる人の相談を受ける仕事もしています。そのような人たちに最初に言うことは、「このようなコミュニティに行ってみてください」ということです。

やはり、一人ですることは本当に大変だし、相談することができない環境は孤独で大変だと感じています。

その人が居心地よく居られる場所を見つけることが大事だなと感じています。それがひとつの突破口になると考えています。

 

ちょこっとQ&A

Q:
のどかさんのような社交的な人ではなく、内向的な人に対してはどのようなメッセージがありますか?

A:
いままでの私の話からすると、いわゆるコワーキングスペースのようなコミュニティは、キャピキャピした集団に見えるかもしれません。でも、社会に生きづらさを感じて流れ着いてきた人もたくさんいるのです。シェアハウスなのに引きこもりの人もいました。

SNSでの印象だけで判断すると、コミュニティという場所は、意外とたくさんの人が集まっている、とか、みんなキラキラしている、などと敬遠してしまう気持ちもわかります。でも、東京と違って、田舎のほうには内向的な人が多かったり、落ち着いた雰囲気のコミュニティもあるので、ぜひ自分の肌で確かめてください。

 

Q:
やりたいことがなくて困っている人に対して伝えたいことはありますか?

A:
最近、私のお客さまで、「人助けをしたい」と語ってくれた人がいました。私はその能力が素晴らしいものだと思って、「他人のことのために動けるのはすごいことだよ」と伝えました。

「みんな夢を持とうぜ」「やりたいことをやろうぜ」みたいなことを言う人もいますが、私はそれが100%だと思っていません。「私はこれが得意だ」というものを表明して、それができることによってお互いがWin-Winになったら、いいと思います。

やりたいことがある人は、それで生きていけばいいと思いますし、そうでない人は、得意なことで生きていけば、素敵な人生になると思います。

 

私も「いつか一緒に仕事がしたいと思っています」とメッセージを入れたら、キーマンにつなげてくれて、とんとん拍子に進んだことがありました。

やりたいと思うことや、自分ができることを、誰かに言うことは大事だな、と思います。

 

取材を終えて

 

野里のどかさんは、「離婚家庭」というカードを手に持って、人生を歩き始めます。それが原因で、しんどい気持ちや苦しい心情を外に出せないまま、現在でもその悩みはあるといいます。

でも、それは、誰かの気持ちに寄り添うというキャリアアドバイザーという仕事に活かされていると感じます。

 

最初の手持ちのカードは少なかったけれど、歩いているうちに他のカードを引き寄せたり、時には、今まで大事にとっておいたカードを切ったりしたこともありました。

これからも、手持ちのカードを入れ替えたり、ずっと持っていたのに気づかなかったカードを発見することもあるでしょう。

 

野里のどかさんの場合、苦しい家庭環境で育ちながらも、早い段階で「希望」のカードを見つけたことが救いだったと感じています。

自分の知っている枠の外に出たら、世界が広いこと、多様性に満ちていることを知った。それが希望のカードにつながったと思うのです。

 

配られたカードで勝負するっきゃないのさ

チャールズ・M・シュルツによる漫画「ピーナッツ」の中で、ルーシーから犬であることを指摘されたスヌーピーが返した言葉です。

今ある手持ちのカードをどう生かすか。

でも、そんなに深刻になることもありません。誰の手にも必ずあなただけのカードがあります。そして、無意識に、そのカードを使いながら、今の自分に辿り着いていることに気がつくでしょう。

 

手持ちのカードが1枚しかなくても、自分のアンテナから、「好き」とか「得意」という電波を発して、跳ね返ってきた情報を受信すること。そして、行動すること。

そうすることで、次のカードを引くことができるのです。

 

今回の野里のどかさんも、大事な進学をお小遣いアップで決めたり、専属ライターになるには東京に行くしかない、と思い込んで留学を中止したこともありました。

それでも、結局は、手持ちのカードを生かした自分らしい働き方で、楽しく暮らしています。

 

これからも、どのようなカードを使っていくのか、とても楽しみです。

野里のどかさん、どうもありがとうございました!

 

今回のお話し:野里のどか さん

1993年、鹿児島県出身。大学を卒業後、新卒フリーランスとして、ライター、ブログ運営、SNS運用、イベント企画運営、講師業、コワーキングスペース店長などパラレルワークを実践。2017年秋にITベンチャー企業「株式会社Ponnuf」に入社。独立支援の田舎移住型Web合宿「田舎フリーランス養成講座」運営マネージャーを務める。
2019年7月に再び独立し、ブロガー、フリーランス広報として活動している。様々な働き方を実践した経験を活かし、キャリアアドバイザーとしてオンライン相談も行う
(参考:いつの日かハッピーエンド

 

 

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