幼少期の「好き」をずっと大切にして今につながる/模様デザイナー:mayaさん
ナチュラルで優しい色使いが特徴のテキスタイルを描いているmayaさん。
幼い頃から絵が得意ではあったものの、現在のスタイルにたどり着くまでには紆余曲折がありました。転職を繰り返して、ようやく自分のやりたいことが固まってきたという道筋は、どのようなものだったのでしょうか。
mayaさんが本格的にテキスタイルを描くまでの道のりをたどっていきます。
「絵画教室に通ってみる?」を断っていた小学生
幼少期から住宅街で育っています。私は早生まれで、他の子ども達よりも年齢的に未熟だったので、できないことが多かったことがもどかしかったことを覚えています。例えば、折り紙をなかなか折れないことがありました。近所に男の子が多かったので戦隊ごっこなどで遊ぶこともありました。
そうした活発な性格であった反面、絵を描いたり図工をしたりするのが好きなことは小学生の時から自覚していました。クラスの文集の表紙を書いたり、展覧会に絵を出展したこともありました。
ある日、母親から「絵画教室に通ってみる?」と言われたことがありました。
でも、「絵を習っているから上手になった」と思われるのが嫌で絵画教室には通いませんでした。
中学ではサッカー部に入りたかったのですが、女子は入部できないので、家庭科部に入っていました。全く違うジャンルですが、お菓子作りに興味があったので、そこでずっと活動していました。
中学校でも、美術展に選出されたり、学校行事にまつわる美術的なことをよく頼まれていました。
こうしたことが思春期の私を形作っていたのだと思います。
1番だったら美術系の専門学校に進学しようと考えていた
高校は近くの商業高校に入りました。
美術部で点描画の油絵を描いていました。絵具で塗ることがあまり得意ではなかったので、点描の技法にたどりつきました。
樹木や海など自然な風景を描くことが多かったと思います。県や市の展覧会で賞を取ったこともありました。
漫然と「事務職に就職するのだろうな…」と考えていた私でしたが、もし、県で出展する美術展で1位を取ったら美術系の専門学校に行こうと考えていました。
しかし、結果は、1番ではなく、3番目の奨励賞だったので、特に美術系の学校へ行くこともせず、就職することを選びました。
私にとって美術系の学校にいくことはただの幻想としか思っていなかったです。
クラスメイトは、1社目で合格する人がほとんどでしたが、私だけ、1社目落ちる、2社目も落ちる、3社目でようやく合格することになります。
半導体からCM制作会社に行き着くまで
人生どうなるかわからないものですが、事務職で安定的に長くお勤めするだろうと考えていたのに、5回も転職することになるとは、この頃にはまだ知る由もありませんでした。
最初の就職先は総務部でOL/半導体商社
半導体商社の総務部に配属になりました。
朝9時から夕方5時までの勤務で、ほとんど残業がない部署でしたし、先輩にもいろいろと面倒を見ていただいて、とてもいい企業だったと思います。
残業がほとんどなく17時以降は自由に使える時間がたくさんあったので、自動車教習所に通ったり、洋服のパタンナーやデザインを学んだりと、いろいろ興味が向く習い事をしていました。
そうしているうちに「せっかく洋服のことを勉強したんだから・・・」という気持ちが湧いてきて、5年間勤めた商社を退社して服飾の会社に転職することにしました。
ファッションデザイナーの大変さ/アパレル関連会社
未経験からのファッションデザイナーはとても大変でした。
私は、夜間学校で服飾デザインの勉強はしていたのですが、それだけではとても追いつけないくらいの知識やスキルが必要な職業でした。
今考えると当たり前のことなのですが。
私の担当していたブランドが撤退することになり、結局1年間で退社せざるを得なくなったのです。思っていたよりも大変な仕事だったので、内心は「退社することになってよかったな」と感じていました。
画像処理+経理/外国人モデル事務所
少人数のアットホームな会社でクリエイティブ な仕事をしながら経理もする仕事に就きました。
複数の写真を組み合わせて合成するコンポジットを作ったり、会社のホームページの更新などの仕事をしていました。
東京コレクションに出ているモデルさんもいたので、私も現場に同行していました。前職のファッションデザイナーと通じるものがあったのでとても楽しかったです。
ところが、ファッションデザイナーをしていた時代に一緒に働いていた同僚が別のブランドに転職し、「うちに来て働いてみないか」とお誘いを受けたのです。
とても楽しかったので、辞める気はなかったのですが、せっかくお誘いを受けたので「もう一度、服飾デザイナーにチャレンジしてみようかな」と思い決断しました。
憧れのモデルさんに着てもらえた/インポートブランド
再びファッションデザイナーとして働きます。仕事をやってもやっても新しいデザインを考えていかなくてはいけない忙しい毎日でした。
しかし、やりがいもありますし、自分のデザインした洋服がショーウィンドウに並んでいることはとても嬉しかったです。
そんなある日のこと。
体調が悪く、出勤時間を遅らせてゆっくり座って乗っていた電車で、妙に車内の広告が気になりました。
「なんだろう」と見回してみたら、私がデザインした赤いコートを着た憧れのモデルさんが載っていました。
車内全部の広告がそのモデルさんでした。山手線のラッピング電車にも使用されました。
言葉にできないくらいの嬉しさだったのを今でも覚えています。
そして次第に、洋服のデザインという立体的なものではなく、そこに使われているプリント柄に興味が惹かれていくのを感じていました。
「絵を描くことと洋服のデザインは違うのだな」とここでやっと認識し、
「私もプリント柄を描いてみたい!」と上司に伝えます。
それが私のテキスタイルの始まりです。
テキスタイル、プリント柄を仕事にしたいと思い会社を辞めますが、テキスタイルの会社に入ることはできませんでした。
経理の仕事に/不動産会社・CM制作会社
テキスタイルの求人もあまりなく、転職もできずだったので一旦経理の仕事に就きます。
働きながら、空いている時間でテキスタイルのデザインコンペに出してみました。
ブランドネームなしに自分の力を試してみたかったからです。
そして、初めて出したデザインコンペで賞を取ることができました。それから毎年1回はテキスタイルデザイン系のデザインコンペに出すようになりました。
そのうち、時短勤務にしてテキスタイルデザインの活動をしていきます。
模様デザイナーとしてフリーランスの世界へ
取引先がなかったのですが、2018年7月フリーランスとしてスタートしました。
クリエイターEXPOという商談展示会に出展し、そうした活動が現在の仕事にもつながっています。
「私の絵だから頼みたい」という方、情熱を持っている方と、一緒にものづくりをしてます。
平日毎日模様を描いてSNSに発表しています。
今では、インスタグラムなどから仕事が入ってくることもあります。
ちょこっとQ&A
Q:
mayaさんの作品のこだわりは、どのようなものですか?
A:
こだわりはないように感じますが、自分がその時描きたいことを描いてます。お花が好きなので花ばかりになってしまいますが。
Q:
これからは、どのようなクリエイターになっていきたいですか?
A:
これからも私の絵がいいと感じてくれる人と一緒に仕事をしていきたいです!
実のところ、私はあまり先のことを考えていません。目標を設定してそれに向けてどうするか、というタイプではないと感じています。あまりいいことだとは思っていないのですが。。
でも、目標は立てたいと思います。
Q:
mayaさんは、転職もどんどんしていくなど、新しい世界に足を踏み入れることが多かったと思います。一方で、世の中には、なかなか一歩前に出ていけない人もいます。何をして良いかわからない人に対しては、どのようなアドバイスがありますか?
A:
いやいや仕事をしていくのはよくないなと身をもって思いました。
お金の心配があるなら貯めて、やりたいことをやったほうがいいと思います。
あまり考えすぎないで、会社にいる以外の時間を、自分にとって充実した時間にしたほうがよいと思います。
もし、やりたいことが見つからなければ、いろいろチャレンジして小さいなことでも行動してみたほうがいいです。きっと何か発見できると思います。
私のように時間短縮を申し出たり、私自身は経験がないですが、契約社員で働いてみることも一つの方法だと思います。
残業をしなくてはいけないなら、自分の工夫次第で残業を少しでも減らすことはできると思います。
ぜひ、自分の時間を大切にしてください。
取材を終えて
幼少期から絵が好きで活発だったというmayaさん。
その才能を伴走させながら仕事をこなすパラレルキャリアを実践していたのではないかと感じました。会社員時代も、しっかりと自分の時間を確保して、服飾デザインなどの夜間学校に通い、自分の好きなことを磨いていったのです。
そうした生活スタイルが、現在の模様デザイナーのお仕事に生かされていると思いました。
「あまり先のことまで考えない」という言葉が印象的で、男性会社員にありがちな目標設定や緻密な計画は立てずに、今の感覚に従って行動していることがわかりました。
転職活動はしんどいことですし、新しい環境に入っていくのに不安を感じる人も多いと思うのですが、「考え過ぎない」ということが、そうした行動をスムーズにしていく秘訣かもしれません。
遠回りしたようで、全部つながって今がある。結局は、現在も自由に幸せに生活しているようなので、人生に難しいことはあまり必要ないのかもしれません。
そう考えると、少しは気が楽になるのではないでしょうか。
mayaさん、どうもありがとうございました!
今回のお話し:maya さん
“セレンディピティ”と“現実的”をホイップして花蝶風月(かちょうふうげつ)の女性らしい世界観を出している。手描き × デジタルの融合作品。様々なプロダクトとコラボレーションし、パッケージ、雑貨、インテリア壁紙、ウェディング関係、浴衣、年賀状デザインなどの幅広い分野で活動している。