根拠なき目標設定に全力を注ぐことで最大の成果が最短ルートで達成する/意図を設定して手放す勇気
重厚長大な企業にいたので、経営目標を策定するときや、自分の成果目標の設定するときでも、常に「どのように目標を達成するのか」ということを問われます。
この「どのように」という部分が日本の企業では一番大切なことなのです。
ですから、やり方や方法を積み上げていって、どの辺に目標があるのかを探っていきます。
だいたい、売り上げ目標で言えば、「毎月平均1億円の売り上げがあるから1億円×12ヶ月=12億円+αで、13億円くらいを来年の会社の目標にしておくか」
…と言った感じです。
日本の歴史ある企業に勤めている人であれば、思い当たる節があるのではないでしょうか。
しかし、私が自分でお金を払って参加した外部の講演会やビジネスセミナーで聞く最先端のやり方は、会社で教えられていることとは全く違っていました。
逆に、会社の研修費を使って「行って来い」と言われた研修会では、会社で言われるのと同じようなことを聞かされていました。
いったい、どちらが本当なの?
・・・というのが私の大きな疑問でした。
意図と方法論どちらを重視するか
会社の仕事のやり方として、目標と、その目標を達成するやり方がセットになって仕事が進んでいく構造です。小さい会社や個人で活動していても、目標と行動がセットで動いているのではないでしょうか。
この目標とやり方(行動)の比重が日本と欧米とではまったく違うのです。
日本の会社は「方法論」を重視する
日本の会社で仕事の計画をする時には「どのように仕事を行うのか」ということが重視されます。仕事の計画を立てる時にも、達成できそうな目標よりも、ちょい上あたりを狙うのではないでしょうか。
先ほどの売り上げ目標の例で言えば「毎月1億円が平均だから年間13億円くらいの目標が妥当ではないか」という計画を立てていくのです。
これは、ある意味、今までのやり方を大きく変えなくてもできるような目標です。
つまり「どのように目標を達成するのか」という部分については、すでに経験済みなわけです。
今までやっていたことの延長で、もうちょい頑張る、という方法で達成していくことを目指します。たいていの場合、今まで通りのやり方を続けていれば、目標値に近い数字で仕上がります。
そうすれば「今年も売り上げは順調でした」と上層部にも報告できるのです。
それに、万が一、目標に大きく届かなかったとしても、
「今まで毎月1億円売り上げていたんですけれどねぇ。今年は天気が悪い日が多くて売り上げが伸びなかったのかもしれません」
・・・なんていう、理由でごまかせたりもするわけです。
計画を立てる時にも「どうやって目標を達成するの?」とか、「やり方を詰めていかないと!」と上から指導されるから、方法論に重点が置かれてしまうのは、ごく自然なことです。
だいたい目標とやり方の比重は2:8くらいです。
「目標設定」に対しては2割程度の意識、そして「やり方」に対しては残りの8割のパワーを注ぐのです。
ところが、海を渡った欧米の企業は、まったく違うアプローチをとります。
目標設定とやり方、どちらをどのくらい重要視するのでしょうか。
海外の会社は「意図」を重視する
海外の会社の仕事のやり方も、目標を設定して、その目標を達成するために行動するというプロセスは同じなのですが、会社がかけるエネルギーの比重が全く違うのです。
日本では圧倒的に「方法論」に重点を置いていました。それは、会社での仕事のやり方を客観的に眺めていると、明らかに方法論重視であることには疑いようがありません。
しかし、海外の会社では、目標設定と方法論とでは、圧倒的に「目標設定」に重点を置いているのです。
間違えました。圧倒的に重点を置いているのではなく、目標設定に100%のパワーを注いでいるのです。
「えっ!目標設定だけしたって仕事にならないじゃん」
と思うかもしれません。
「目標設定するだけだなら、こんなに簡単なことはないよ」
とも感じるかもしれません。
でも、そのような目標設定に100%の勢力を注いでしまうのです。
そして、そんな欧米の企業が圧倒的に効率の良い利益を上げているわけです。
例えば、世界の時価総額上位トップ10の会社では、9位までがアメリカの企業です。(2016年9月末時点)
1.アップル
2.アルファベット(グーグル)
3.マイクロソフト
4.アマゾン
5.フェイスブック
・・・と、誰もが知っている企業がずらりと並びます。
日本の企業では、トヨタ自動車がやっと28位にランクインしているというありさまです。
トヨタ自動車といえば、かんばん方式とかトヨタ式カイゼンなど、世界的に有名なノウハウを持ってはいます。あと1歩動作を短縮するにはどうしたら良いのか、という細かい改善の積み重ねで原価を圧縮していくやり方です。
これも方法論を重視する日本的な真面目なやり方でです。
しかし、欧米の企業は目標設定がほぼすべて、と言いました。
例えば、グーグルでは、
Google’s mission is to organize the world’s information and make it universally accessible and useful.
「グーグルのミッションは、世界中の情報を整理して、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることである」
…としています。
これがグーグルの究極の目標設定であり、このミッションに沿った形で仕事が進められているのです。
それは、まさにグーグルの心の奥底から発せられた意図です。
世界中のあらゆる情報を整理しようとしているわけですから、とてつもなく壮大な計画です。
こうした目標を心の芯から納得できるまでに練り上げていくのです。方法論はまったく出てきません。
このようなことを日本の会社でやったら「目標を書き直せ!」と言われてしまうでしょう。
「どうやって世界中の情報を整理するというのだ!?」となってしまうからです。
ところが、欧米の企業は、こうした壮大なビジョンを頭から煙が出るくらいに考え抜きます。そうして出来上がった目標を社員で共有しさえすれば、方法論は自動発生的に出てくるというのです。
今までの延長線上ではない創意工夫が生まれます。
個人で生きていく場合にはどうか
今までは企業にとっての目標設定について書いてきましたが、こうした「目標のみ」で仕事をしていくのは個人の場合でも同じなのでしょうか。
答えは「イエス!」です。
これは、日本でも成功している人の話を聞いたりしても、同じことを言います。さらに、ビジネスからは遠い位置にいるようなカナダのセラピストに聞いても、人生を幸せにする秘訣は「意図のみ」とはっきりと答えます。
そして、実際に通常ではありえないほどの富や幸せを作り出しているのです。
私は、ずっと会社で方法論の重要性をずっと教育されていましたから、意図に100%のエネルギーを注ぐということにピンとこなかったのです。しかし、世界を見渡してみると、なるほど「意図」に100%の力をこめたほうがはるかにうまく言っていることに気がつきました。
それからは、「意図」を紙に書いて眺めたり、瞑想前に録音した意図を聞いたりするようになりました。
あとは、本当に100%のエネルギーを、意図に注げるかどうか、です。
会社では方法論重視が幅を利かせているので、その中で意図の重要性を一生懸命に説いても、誰も聞いてくれないでしょう。しかしながら、最小のエネルギーで最大のパワーを生み出すのは、意図にエネルギーを投じた時なのです。
自分だけでも、こっそりと意図を明確にして、その意図にエネルギーを注いでみると、方法論はあまり重要ではない、ということが結果としてわかってくると思います。