職場で怒りの感情が爆発しそうになった時の対処法/直前の感情に意識を向ける
職場で仕事をしていると、時に怒りの感情が湧いてきてしまうことがありますね。一年中、ずっと怒りの感情を感じることなく過ごしてきたという人はいないのではないでしょうか。
会社では組織として仕事をしているので、なるべく平穏な環境を保とうと誰もが努力しています。しかしながら、そんな環境で怒りを爆発させてしまうような出来事があったら、どのように対処したら良いのでしょうか。
職場での怒りの原因のほとんどは「期待外れ」によるもの
職場であっても家庭であっても、あなたの期待している通りに周囲が行動すれば怒りは湧いてこないはずです。怒りが生じるのは、期待していた行動や成果が得られなかった時です。
一生懸命にやった仕事がまったく無意味になってしまった事例
例えば、あなたが新しいサービスを紹介するためにプレゼン資料を作成しているとします。毎日残業して一生懸命に仕事をして、ようやく50ページにわたるパワーポイントの資料が用意できました。
しかし、プレゼンの前日になって、新サービスの発表は中止。それも、中止になったのは、新サービスの開発を主導した上司の心変わりだったとしたら・・・。
あなたは、このために何日も努力してきました。しかし、ここまでやってきた労力が不要になってしまったのです。しかも、このプレゼン資料を作るために、他の仕事を後回しにしてやっていたため、溜まりに溜まってしまった仕事もたくさんあります。
このとき、あなたは怒りを爆発させます。やむを得ない事情でサービスが中止になったのではなく、上司の心変わりだけだからです。
「いったい、私は何のために、いままで頑張ってきたんですか!実現させようする気がなかったのですか!?」
あなたの憤りはおさまりません。
もしかしたら、オフィスの中で大声をあげてしまっているかもれません。
平穏な環境を最優先させる職場中で、平和を乱すのはもっともよくないとされる会社文化とされています。
・・・とはいえ、抑えきれないからシャウトしてしまったわけです。怒るのは当たり前だ、とあなたは思うでしょう。
これに近いことが、私の働いていた職場でもありました。
社員は上司に向かって、書類を投げつけて怒っていました。他の社員は見て見ぬ振りをして、ひたすらパソコンの画面を見ながらキーボードを打ち込んでいます。
「一生懸命やった仕事は受け入れてくれるはず」という期待が裏切られたために怒りが発生
怒った社員の言い分はもっともなことでしょう。完全に無駄な仕事をしていたわけですから。
きっと頑張って作成したプレゼン資料は、会社の役に立つはずだ、という期待が外れてしまったのです。それも、最初にイメージしていた期待と大きなギャップがありました。
そのギャップが大きければ大きいほど、怒りの感情も大きくなってしまうのです。
一生懸命に締め切りまで間に合わせた資料だけれど、プレゼンが1日延期になった、というくらいなら、「なんだ、あと1日余裕があったんだ」というくらいで、怒りが爆発するまでにはならないでしょう。
「この日にプレゼンする」というイメージが「1日延期になった日にちでプレゼンする」と変わっただけで、期待と現実のギャップが小さいからです。
それでは、やはり、期待はずれが大きい場合には、職場で怒鳴り散らすくらいに怒ってしまっていいのでしょうか。
怒りの感情を発散してしまった場合のダメージも甚大
さて、期待を裏切られたあなたは職場で大いに怒ってしまいました。怒って上司に抗議したことで、今後、このようなことがないようにするための牽制にはなったかもしれません。
しかし、困ったことも起きます。
あなたの怒りは相手の怒りの連鎖につながる
さて、思いの丈をぶちまけて怒りをあらわにしたあなたですが、これで終わることはありませんでした。
急にプレゼンを中止したとはいえ、上司としては、部下から怒りをぶつけられるという攻撃を受けたのです。実際の事例では、上司のほうも、反撃に出ます。
少し時間を置いてから、上司は部下を会議室に呼び出しました。そして、こう言ったのです。
「お前みたいな社員はいらないんだよ!」
上司に怒りをぶちまけた部下はショックを受けます。会社の外へ出て、しばらくオフィスのデスクには戻ってきませんでした。
翌日からの職場の居心地が悪くなる
しかし、翌日からは、職場の微妙な空気を感じ取ることになるでしょう。なんだか、とても居心地が悪いのです。
周囲の社員たちは、つとめていつも通りに振舞おうとしています。でも、なんとなく周囲の人たちが、わざとらしく平穏を装っていることに気がつくでしょう。
微妙な違いは大きな違いにも感じます。
もちろん、上司との関係は最悪です。
仕事上のことで報告や連絡をするにあたっても、最低限の会話しか交わさず、しかも、感情を押し殺してマシンのように受け答えをするだけです。
その後、この部下はどうしたかというと、数ヶ月後に会社を辞めてしまいました。とても優秀な社員でしたが、感情的に怒りをあらわにしたことで会社を去ることになったのです。
職場で怒りの感情が湧いてしまった時の対処法
そうはいっても、職場で働いているといろいろなことが起きます。いったい、怒りの感情が沸騰してしまったら、どうしたら良いのでしょうか。
怒りが湧いてきたら「直前の感情」に意識を向けること
心理学的に、怒りは「第2感情」と言われます。では、第1感情は何かというと、怒りの原因となった感情のことです。
「怒りの感情は怒りじゃないの??」
と思うかもしれませんが、怒りの一瞬前には、別の感情がワンクッション入っているのです。
「出来事 → 怒り」
ではななく、
「出来事 → (感情) → 怒り」
なのです。
では、怒りに通じる感情とはどういうものなのでしょうか。
それは、「とても残念だ」「期待はずれで驚いている」「とても悲しい」「すごく不安だ」という感情です。こうした感情が一瞬入って、怒りへと受け継がれるのです。
だから、怒りを覚えたら、怒りの感情をそのままぶちまけるのではなく、怒りの一瞬前の感情、例えば「とても悲しい」という感情に着目して、その感情をアウトプットするのです。
「プレゼンが中止となり、とても悲しいです」
という感情をアウトプットする。怒るまえの感情ですから、そこに怒りは含まれていません。
そうすると、冷静にコミュニケーションが取れるようになるのです。
怒っている時に、こうした第1感情に意識を向けるのは難しいかもしれません。しかし、自分の身体から意識だけを抜け出させた形で、ナナメ上の方から自分を眺めているようにすると、その第一感情に気づいてきます。
怒りは破壊的なパワーがあります。怒っている時の息をスポイトで集めて植物に吹きかけたら、枯れてしまったという話を聞いたこともあるでしょう。それくらい物質的にも毒素が含まれているのです。
怒りのエネルギーは強烈なので、確かに何かを成し遂げる時の原動力になることもあるかもしれません。しかし、少なくとも職場では良い方向に向いていかないのです。
怒りを抑え込むと苦しい。だから、怒りの一瞬前の感情に意識を向ける。
その一瞬前の感情こそが、怒っている本人の本音なのです。
まとめ
怒りは、期待はずれの大きさにあります。期待していたものと結果に大きな隔たりがある時に、人は怒りを感じるのです。
そして、感情に任せて職場で怒りをぶちまけてしまうと、その一瞬は、発散したように感じますが、時間差で居心地の悪さが襲ってきます。そして、それはかなり長い時間続くのです。
もし、怒りの感情が出てきてしまったら、その直前の感情、「第一感情」に意識を向けましょう。そして、その第一感情を相手に伝えることで、怒りの関係からコミュニケーションの関係に持ち込むのです。
職場でうまくやっていくには、こうしたテクニックが時に大切です。少しでも、快適な職場環境を作っていきましょう。