「できること」の中に自分らしさの種がある。コーヒー焙煎の岩野響さんから学んだこと

あえて高校には行かずに、15歳でコーヒショップの店長をやっている岩野響さんをご存知でしょうか。
コーヒーショップといっても、実際に販売しているのは、彼が自ら焙煎したコーヒー豆のみ。自宅を改造した8畳ほどのスペースに、手作りのカウンターや椅子を並べてお店にしたものです。
岩野響さんのことは、偶然に訪れた「d47 MUSEUM」の群馬県ブースで知りました。
「これからの暮らしかた」を都道府県別に紹介する催しだったのですが、その中で、ある言葉に釘付けになりました。
僕ができることから、僕にしかできないことへ
岩野響さんは、アスペルガー症候群、いわゆる発達障害と診断されて、中学校生活を送ることが困難になってしまったのだそうです。
世間では「ふつう」とされている生活をすることができなくなり、ご両親もいろいろと悩まれた挙句、無理に中学に登校させることをやめたのだと言います。
そんな岩野響さんでも、味覚に関する感覚には敏感で、料理の微妙な味加減を見極めたりと特徴があったようです。
読書、写真、版画、料理、盆栽と、15歳とは思えないような渋い趣味を持っていた岩野響さんですが、ある日、いつも飲んでいるコーヒーにとても興味を惹かれたとのこと。
コーヒーの淹れ方や豆の種類などの奥深さを感じたようです。
ある日、お母様の知り合いからもらった焙煎機がきっかけで、焙煎にのめり込むようになります。本を読み漁り、2人の焙煎士にも指導を仰ぐようになり、コーヒーの世界を探求するようになります。
コーヒーといえば、日本中どこにでもあり、多くのショップオーナーが熱心にそのお店だけのコーヒーの味を作ろうと日夜研究が繰り広げらているレッドオーシャンです。
ただ、岩野響さんにとっては、そのような周囲の状況は重要ではなかったのだと思います。
とにかくコーヒー豆の焙煎を通じて、その先に広がる世界を見つけてしまったのです。
自分だけの海。自分だけの世界。
岩野響さんのコーヒー店は、horizon_labo(ホライズンラボ)といい、そこで焙煎したコーヒーをホライズンコーヒーといいます。まさに、コーヒーを通じて、海へ漕ぎ出し、その先の視線に水平線(ホライズン)を見つけたのでしょう。
そして、ホライズンラボというだけあって、実際にはコーヒーの焙煎を探求する研究室という位置付けなのだそうです。そして、コーヒー豆を販売する月初の7日間を研究発表と称して、彼が焙煎したコーヒー豆を販売しています。
(※9月現在、来客数の大幅な増加による近隣の混雑解消のため、リアル店舗を閉店し通信販売に移行するようです)
彼がやってきたことは「ぼくにしかできないことを見つける」ということです。
ホライズンラボは、そのための研究室だと言います。
しかし、「僕にしかできないこと」は、「僕ができること」の中にあったのだと思います。
ぼくができることから
ぼくにしかできないことへ
私が日頃考えていたことが、d47MUSEUMに訪れていたときに、突然目の前に現れたので、びっくりしたのです。まさにシンクロニシティ、という感じでした。
「できること」にフォーカスして生きていく。型にはめない、はまらない人生のつくりかた
自分が何か新しいことをやろうと考えた時、つい、「できないことをできるようしてやろう」と思いがちです。しかし、できないことは、いくら努力しても、できないままで終わってしまうこともあると思います。
100歳のおじいさんが、「100mを9秒台で走りたいんじゃ!」と言って、彼なりに猛烈に努力しても、9秒台で走れるようにはならないでしょう。
それよりも、できること…..たとえば手先が器用なら、すばらしい盆栽を生み出すことができるかもしれません。手先の器用さという特徴を活用して、できることにフォーカスしたわけです。
岩野響さんも、発達障害ということから、いわゆる普通と言われる人々の多くが進むであろう高校進学という道には進みませんでした。大勢の人々が進む道から外れてしまい、不安もあっただろうと思います。
現に、自分のお店を持ちたい、という願いと合わせて、高校に行った方がよいのだろうか、と真剣に悩んだと言います。
それでも、高校進学という道に自分を無理やり合わせるのではなく、「自分にできること」にフォーカスしたのです。そして、自分にできることにフォーカスした結果、その先にホライズンが見えたわけです。
「自分にできること」にフォーカスすれば、それは「自分にはできる」のですから、「できない」と悩むことはありません。もちろん、もっと高みを目指そうとして、そのイメージに到達していないという課題を感じることがあるかもしれません。しかし、現実には、「自分ができること」に対して、さらに、磨きをかけているわけです。
コーヒー豆の焙煎という小さな入り口から、彼は、奥深くて、さらに広い大海原を見つけました。そして、前を見据えて見えているのは、どこまでも広がる青い水平線、ホライズンです。
いちばん大事なこと。それは、よくわからない世間の常識という型にフォーカスしてしまうのではなく、最初に、自分自身にフォーカスすることなのかもしれません。
理解ある両親の支援があったとはいえ、15歳で自立していこうと決意したことについては、本当にすごいことだと思います。
しかし、また、「できることをやればいいんだ」「世間の常識から外れてしまってもいいんだ」という希望でもあると思います。
できることにフォーカスして生きていく
これは、これから20年後の未来では、かなりメジャーな生き方、生活スタイルになっていると思います。
誰もが、自分のできること、やりたいことで、生活できる社会へ。
そんな社会の到来を予感させるような風を感じました。
ホライズンコーヒーのお味は?
・・・ということで、私もようやくホライズンコーヒーを手に入れました!
最近は新聞やテレビで紹介されたこともあり、すぐに売り切れになってしまうコーヒー豆。
岩野響さんの焙煎したコーヒーを飲むために、コーヒーミルも買ってしまいました。
袋から出したコーヒー豆は、、、このとおり、ツヤツヤです。
いつも飲んでいるコーヒーは、すでに豆を挽いてある粉状のものなので、自分で実際にコーヒー豆をひいたことはありません。
さっそく豆挽きに挑戦してみます。
コーヒーミルに豆を入れて、ハンドルを時計回りにぐるぐる回します。
コーヒースプーンに2杯分を投入しましたが、思ったよりも豆を挽く時間は長くて、粉状になるまで一生懸命に回しても3分かかりました。
コーヒーの粉を入れて、お湯を注ぎます。
お湯は、青い瓶に入れた水を2時間太陽光に晒した「ブルーソーラーウォーター」で沸かすことにしました。
さっそく飲んでみます。
「ん、、、これは・・・!」
今まで飲んでいたコーヒーとはまったく別物です!
コーヒーの高い香りと深煎りのほろ苦さが際立ちます。深い苦味なのにすっきりとしています。苦味と清々しさの相反する味を、同時に表現しているようでとても不思議な感じです。
私はいつもブラックで飲むのですが、時によって全部飲めずに残してしまうことがありました。
しかし、ホライズンコーヒーは、深い苦味があるのにもかかわらずスッキリしているので、つい、おかわりのコーヒーを作ってしまったほどです。
(湯飲み茶わんでコーヒーですが…)
とても美味しくいただきました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
自分らしい世界を作り出すには「できることにフォーカスしていく」ということを意識することでした。
そして、できることにフォーカスした結果、自分の世界を見つけたならば、人と違った生き方をしてもいい、ということです。
岩野響さんは、まだ15歳で発達障害というハンデも持っている、というように世間は見てしまうかもしれません。しかし、できることの中に、自分にしかできないことへの種がある、ということを実例で示してくれたように思います。
今年の4月にオープンして、数ヶ月で全国区になってしまいました。彼は、自分のできることに対して、さらに磨きをかけていっただけです。
それでも自分らしいスタイルで自立して、多くの人を喜ばせ、幸せに暮らすことができています。
自分のできることで、人を幸せにできたら、どんなに嬉しいでしょうか。
自分ができることから、自分にしかできないことへ変化したとき、それを「自分らしさ」と呼ぶのかもしれません。